地域美術研究部会

日時
2019年5月23日(木)
場所
北海道立近代美術館

第10回地域美術研究部会会合報告

 第10回会合は、第68回全国美術館会議総会に合わせて、5月23日に北海道立近代美術館で開催された。
 午前には学芸員の松山聖央氏より、函館出身の画家、深井克美(1948-1978)に関する発表があった。本年2月5日から3月21日まで同館で開催された、特別展「生誕70年・没後40年記念 深井克美展」の報告である。没後5年の1983年に、同館が「深井克美展:未完のランナー」を開催している。その後の調査を踏まえた展覧会であった。1983年の展覧会に関わった、当時の同館学芸員である正木基氏の熱意により本展は実現したという。図録は同氏の編集により一般書籍として刊行された。発表のあと、収蔵庫で深井克美作品を熟覧する。そして「近美コレクション」で展示中の《人》を見学する。
 午後には学芸統括官の五十嵐聡美氏より、松前で活躍した画家、漢詩人である、蠣崎波響(1764-1826)に関する発表があった。「近美コレクション」で開催中の特集展示「風雅の人 蠣崎波響展」(3月30日~7月28日)に関する報告である。同館の蠣崎波響との関わりは、1979年に開催した「松前の明星 蠣崎波響展」にさかのぼる。今回は、新購入、新寄贈の作品に、道内個人所蔵家の作品を交えている。報告のあと展示を見学した。展覧会の全体会期が長いため、6月からほとんどの作品が展示替になる。
 同館は1977年に開館している。両作家については、当時の学芸員などの研究が、長期間にわたって積み重ねられていることがわかった。当初の展覧会から、いわゆるバブル時代を経て、今年の展覧会が開催されている。個人蔵の作品は所有者に移動があり、探索に時間を要したという。波響のように高名な画家になると、作品の持ち込みが多く、真贋を考えなければならないとのことである。79年に開催した特別展のあと、五十嵐氏は同館紀要で、落款と印章について、論考を発表している。
 遺族そして個人所蔵家との関係は非常に重要である。また新規寄贈と購入の案件は意図せず起こることが多い。作品の卓越性と損傷の有無、現時点における所蔵状況の確認、そして収集規模を考え、予算の範囲で対処しなければならないことを確認した。
 深井克美展の図録は、道内だけでなく広い地域を視野に入れるため一般書籍にしたが、部数が少なかったこともあり、あまり流通していない。かつては同館が編集して北海道の美術を紹介する「ミュージアム新書」を、北海道新聞社から刊行していた。
 蠣崎波響については、2015年の北海道博物館開館記念特別展で、代表作の《夷酋列像》が紹介された。美術館と博物館は、異なった角度で作品と資料を収蔵して展覧会を開催している。必要な場合に美術館と博物館が協力すれば良いのでは、との意見が出た。
 次回の会合は、本年秋に東京都で開催される予定である。 
(岡山県立美術館 廣瀬就久)

出席者:11名

部会長:西村勇晴(北九州市立美術館館長)
幹 事:山田 諭(京都市美術館) 
幹 事:藤崎 綾(広島県立美術館)
木内真由美(長野県信濃美術館)
山梨俊夫(国立国際美術館)
越智裕二郎(西宮市大谷記念美術館)
廣瀬就久(岡山県立美術館)
廣田理紗(島根県立石見美術館)
発表者:五十嵐聡美(北海道立近代美術館)
    松山聖央(北海道立近代美術館)
大越久子(全国美術館会議事務局)
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