地域美術研究部会

日時
2015年11月25日(水) ~2015年11月26日(木)
場所
広島県立美術館 講堂、岡山県立美術館 講義室

第3回地域美術研究部会会合報告

 地域美術研究の実践例を学ぶ方針の本研究部会の第3回会合は、中国ブロックの広島県立美術館と岡山県立美術館を会場に行われた。
 1日目は広島県立美術館の藤崎学芸員による発表が行われた。1897年頃に結成された広陵美術会を起点に、戦前の広島県内の洋画の動向を草創期、展開期、伸展期に区分し、それぞれの時期の代表的作家について特に山路商と靉光を中心に紹介をうけた。広島の洋画は地元出身者より師範学校などに教師として赴任した画家らによって発展したという。また、いわゆる県展が戦前から民間で組織されていたという点に関して、参加者からも各地域の公募展について情報交換があり、地域ごとの成り立ちやあゆみの違いは興味深かった。
 丹念な地元調査を基礎とした発表を聞きながら、地方美術館の果たすべき大きな役割だと実感した。続いての所蔵作品見学では、本年度新収蔵作品から広島ゆかりの作家7名、10点を実見した。 
質疑応答では地元の寄贈作品の受け入れに関しての話題や、同じ地域の他美術館との収集方針の住み分け、調査した内容を次世代へ残す意義などについて意見が交わされた。

 2日目は岡山県立美術館の廣瀬学芸員による発表が行われた。館の組織についての紹介に続いて館の運営について説明があった。館の収集方針については1988年の開館以来、所蔵品は岡山県生まれ、岡山県で活動した作家、岡山県を画題としたもの、など「岡山県ゆかりの美術」のみで統一している。また先行して開館した県内の他美術館の所蔵品との住み分けも行われている。次に展示について、常設展の名称については「所蔵品展」の名称を避け「岡山の美術」とすることにより、所蔵品に限定しない幅広い視野から郷土研究を行うなど、岡山県の美術に特化する方針であることが明確に打ち出されているのが印象的であった。 
 続いて所蔵作品見学では、赤松麟作、坂田一男の油彩、素描など17点のほか、河原修平の自画像《峠道》も実見できた。
 質疑応答では運営に関するものが多く、方針にある「ゆかり」の定義についての質問をはじめ、方針が美術館の活動を束縛するのではないかという危惧の声や、自館の方針と比較しての意見、美術館の運営と行政との関わりなど、さまざまな活発な意見交換がなされた。
 また、西村部会長から今後の本研究部会の中で取り組む共通のテーマを設けてはとの提案があり、次回に持ち越すことになった。
(北九州市立美術館 重松知美)

出席者:12名

発表者:藤崎 綾(広島県立美術館) 
    廣瀬就久(岡山県立美術館)
部会長:西村勇晴(北九州市立美術館館長)
幹 事:山田 諭(名古屋市美術館) 
幹 事:泰井 良(静岡県立美術館)
吉田衣里(茨城県近代美術館)
江川佳秀(徳島県立近代美術館)
川浪千鶴(高知県立美術館)
小林豊子(全国美術館会議事務局)
オブザーバー
山梨俊夫(国立国際美術館)
周々木朝香(広島県庁[広島県立美術館])
一柳友子(香川県立ミュージアム)
重松知美(北九州市立美術館)
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