地域美術研究部会

日時
2016年5月27日(金)
場所
福岡県立美術館 視聴覚室

第4回地域美術研究部会会合報告

 九州ブロックの福岡県立美術館を会場にして行われた。 
 副館長の西本匡伸氏からは、「福岡県の近代美術」形成の一例として、と題された発表があった。同館の前身は、「福岡県文化会館」の名称で、図書館との複合施設として1964年に設置されている。配付資料の「福岡県文化会館ならびに福岡県立美術館での主な展覧会一覧」を参照した。福岡県の近代美術について、没後の作家を扱うことを基本にしている。当初より単館の自主企画で、出品作品と参考図版を掲載した図録を作成した。また各作家だけでなく、洋画、日本画、工芸、彫刻とい
った通史的な展覧会も、計画的に行った。そして高島野十郎など、知られていない作家を現在まで紹介している。
 学芸員の高山百合氏からは、発表「福岡の近代洋画を語りなおすために」があった。2012年以降の、福岡の近代洋画に関する5つの展覧会をもとにしている。「パレット会」「筑前美術会」「二科西人社」などの美術活動や、高島野十郎の絵画制作に関する科学的調査が取り上げられた。また九州大学に関連して、工学部の壁画と、医学部に勤務しながら収集家、美術評論家として活動した中山森彦などが紹介された。
 2つの興味深い発表のあと、高島野十郎の作品と中山森彦資料を熟覧し、福岡県立美術館コレクション展Ⅰ「特集 児島善三郎と独立美術協会」を見学した。
 そして質疑応答、討論では、前回同様「地域ゆかりの美術」の内容が話題になった。地域出身の人、地域
で活動した人、その地域に関する人や風景を描いた作品、地域の美術運動、地域の美術への支援者、地域にある所蔵品などの切り口がある。各美術館が対象とする「地域」のなかにも、個性の異なる多数の小地域が含まれる。「地域ゆかり」を、簡単に定義することは難しいのではないかという意見もあった。上記の中山森彦など、美術作家や支援者による関連資料を組織的に保存して、今後の研究に生かす必要があることを確かめた。
(岡山県立美術館 廣瀬就久)

出席者:11名

部会長:西村勇晴(北九州市立美術館館長)
幹 事:山田 諭(名古屋市美術館) 
幹 事:泰井 良(静岡県立美術館)
廣瀬就久(岡山県立美術館)
藤崎 綾(広島県立美術館)
川浪千鶴(高知県立美術館)
重松知美(北九州市立美術館)
発表者
西本匡伸・高山百合(福岡県立美術館)
オブザーバー
山梨俊夫(国立国際美術館)
前山祐司(全国美術館会議事務局・埼玉県立近代美術館)
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