地域美術研究部会過去の活動

日時
2014年7月31日(木)
13:00~15:00
場所
国立西洋美術館 第一会議室

地域美術研究部会 準備会合報告

 第28回学芸員研修会「地域からの拠点-美術史の再構築に向けて」において、山梨俊夫(全国美術館会議副会長)からの提案を受けて、第63回全国美術館会議総会で新たに創設が承認された「地域美術研究部会」の準備会合を、7月31日(木)に国立西洋美術館で開催しました。
 「地域美術研究部会の発足趣旨」(下記を参照)に基づいて、新部会の活動方針および計画についての討議を行って、活動の基本方針と今年度の活動計画について下記のように決定しました。

 美術館にとって、その美術館が存立する地域における美術の歴史を調査・研究して、歴史的に重要な作品を収集・保存するとともに、展示・公開することは、その地域の美術の伝統を継承して、新しい美術の創造に寄与するために、重要な基礎的な活動です。
 これまで日本の美術館においては、地道な調査・研究の継続によって、「地域美術」のコレクションとして蓄積されてきました。しかし、これらの作品は、主に常設展などで展示され、研究紀要などに論考が掲載されながら、全国的な展覧会やカタログなどではあまり紹介されないために、広範には知られることのないままにあります。
 このような現状を踏まえて、全国各地の「地域美術」に関する情報交換を進めるとともに、新たな「地域美術」の調査・研究を促して、全国の美術館(学芸員)の相互協力を図って、将来的には「地域美術」の観点から新しい美術史を総合的に研究することを、地域美術研究部会の活動の基本方針および目標として確定しました。
 各年度における活動計画としては、年間に2回程度の研究部会を、全国美術館会議の地域ブロック(10ブロック)にある美術館を会場として、継続的に巡回開催することになりました。研究部会の内容としては、全国各地における「地域美術」の調査・研究の成果の発表を中心として、他の「地域美術」との関連する情報交換と今後の活動計画の討議を行います。

 本年度の第1回研究部会は、下記のように、東海ブロックの名古屋市美術館と岐阜県美術館を会場として、11月11日(火)~12日(水)に開催します。
 

第1回地域美術研究部会 「地域美術」の調査・研究の事例報告および活動計画の討議

第1日:
日時:2014年11月11日(火)13:00~17:00
会場:名古屋市美術館(講堂・収蔵庫)
報告:山田 諭(名古屋市美術館・学芸員)

第2日:
日時:2014年11月12日(水)10:00~15:00
場所:岐阜県美術館(講堂・収蔵庫)
報告:廣江泰孝(岐阜県美術館・学芸員)

テーマ、プログラムなどの詳細な内容については、改めて報告します。

 各地域ブロックにおける「地域美術」の調査・研究において先進的な活動を行なっている美術館の学芸員の方々をはじめとして、新たに「地域美術」の調査・研究に取り組もうとする美術館の若い学芸員の皆さんの参加を期待しています。 

出席者

部会長:鍵岡正謹(岡山県立美術館館長)
部会幹事:山田 諭(名古屋市立美術館) 
部会幹事:泰井 良(静岡県立美術館)
オブザーバー:山梨俊夫(国立国際美術館館長)
オブザーバー:中村 誠(埼玉県立近代美術館)
オブザーバー:水野元洋(全国美術館会議事務局)
オブザーバー:小林豊子(全国美術館会議事務局) 

地域美術研究部会の発足趣意

 現在、全国の美術館では、「地元ゆかり」の美術作家を中心とした近現代の作品の収集が増大している。両度の大震災等を除けば、戦後大量に作品が失われる災厄に見舞われることなく、作家、コレクター、その家族の手元に多くの作品が保管されてきて、高齢化と没後の作品の行く末に、美術館が想定されるケースが増大していることが背景にある。各美術館は多くの場合、設立当初から、それぞれの地域に関わる美術作品を収集の対象としているが、こうした事情から近年「地元ゆかり」の作品の収蔵がいよいよ増えている。しかも、ほとんど例外なく財政状況が悪化しているため、収集の大部分は寄贈によっている。
 このことは、美術館に改めて、地域中心の作家、作品についての調査研究を呼び起こしている。言ってみれば、学芸員が学生時代に学んだ美術史に名もないような作家への調査研究が要請され、若干の戸惑いを含みながら、東京京都中心の美術史、国立美術館といくつかの歴史の古い公立私立美術館のコレクションで組み立てられてきた美術史の文脈に地域の美術をどう組み込むかといった視点から、最近はそれぞれの地域美術の調査が進んできている。しかし、地域同士の連携や研究の情報交換については、個人的なレヴェルは別にして、恒常的に開かれた場所が欠けている。
 以上の状況に鑑みて、地域研究の基盤がコレクションとしては増大しているのに対し、情報交換、研究視点の検討と共有の場を全国美術館会議内に設ける意義は大きいと考え、ここに、そのことを目的にした新たな部会の立ち上げを提案したい。また、現在全美内の七つの部会のうちには、美術史研究を主眼にしたものがないため、美術館活動の重要な根幹の一つをなす研究活動を主軸にした部会の立ち上げは、その点でも大きな意味があると思量する。
 この新たな部会設立の提案は、本年3月3日に西洋美術館で行った学芸員研修会「地域からの視点――美術史の再構築に向けて」での議論を踏まえている。
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