教育普及研究部会

日時
2016年2月16日(火) ~2016年2月17日(水)
場所
東京都美術館 アートスタディルーム

第47回教育普及研究部会会合報告

 今年度2回目の会合は東京都美術館で開催した。
 1日目は国立西洋美術館(以下、西美)で教育普及室長を務める寺島洋子主任研究員へのインタビューを行った。先ごろ刊行された報告書『国立西洋美術館 教育活動の記録1959-2012』には50余年にわたる西美の教育活動の変遷がまとめられているが、1994年から約20年にわたり関わってこられた寺島氏に、報告書の刊行を機にこれまでの活動を振り返って改めて気づいたことや考えたこと、今後の美術館教育について思うことなどを伺うことをねらいとした。
 なお、今回のインタビュー実施と準備にあたっては、以前西美の教育普及室でアシスタントを務めていた東京国立博物館の藤田千織氏をはじめ西美インターン経験者である3名(いずれも本研究部会メンバー)に協力を仰ぎ、寺島氏の多岐にわたる活動とその基礎となる考え方を引き出すインタビュアーとしてご活躍いただいた。インタビュー後の質疑応答も活発に行われ、大きな学びがあった。内容の詳細はこれまでと同様にテープ起こし、関係者の校正・編集を経て、全美ホームページでの共有が可能となるよう順次作業を進めていく。
 その後、幹事より12月に開催された研究部会幹事会での議題、次回総会の開催地及び日程の伝達のほか、2016年4月から施行される「障害者差別解消法」に関する話題提供を行った。 
 2日目は参加者全員をグループに分け、「ビブリオバトル」なるワークショップを行った。
 近年、大学や学校、図書館等で盛んに取り組まれている書評合戦だが、今回は美術館の教育普及の考え方に関連する(と各自が思って読み、面白かった)書籍を紹介するというルールを付加した。メンバーが普段どのような書籍から教育普及について考えるヒントを得ているのか知見を広げることはもちろん、同じ本でも紹介する人の切り口によって、全くの別の本を読んだように感じられたことは新鮮な体験だった。他者に読んでみたいと思わせるプレゼンテーションにはある程度スキルも必要だが、ギャラリートークなど普段の教育普及活動とも通じるところがあると感じた。
 なお、今回のビブリオバトル決勝戦で紹介された書籍は、岡倉天心『茶の本』、吉田重人/岡ノ谷一夫『ハダカデバネズミ―女王、兵隊、ふとん係』、鷲田清一『パラレルな知性』、鴻上尚史『発声と身体のレッスン』、E.L.カニグズバーグ『クローディアの秘密』、伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の6冊である。
 
 その後引き続き、会場をご提供いただいた東京都美術館のアートコミュニケーション担当係長の稲庭彩和子氏より上野の森一帯の博物館施設による連携事業「Museum Start あいうえの」に関する報告を、昼食休憩を挟んだ後は、再び西美の寺島洋子氏より北欧の美術館における教育普及活動についての調査報告を受けた。また会合終了後は東京都美術館のご厚意で開催中のボッティチェリ展も見学した。
(報告者:名古屋市美術館 清家三智)

出席者

会員29名
オブザーバー19名
事務局1名
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