教育普及研究部会

日時
2016年9月5日(月) ~2016年9月6日(火)
場所
名古屋市美術館 講堂

第48回教育普及研究部会会合報告

 今年度1回目の会合は名古屋市美術館で開催した。
 1日目は、5月の全美総会における報告事項の伝達、参加者の自己紹介の後、「美術館の教育普及担当職員の世代交代」について話し合う場を設定した。
 教育普及担当に限らず、美術館における有期雇用職員の割合は近年増加しており、研究部会の前身であるワーキンググループが発足した20数年前と比べ、教育普及担当スタッフの雇用形態も多様になっている。そのような状況で各館の教育普及活動の理念はどのように引き継がれているのか、そもそも継承は必要なのか、もし必要ならば何を/どのように継承すべきか、という問いかけに対し、異なる環境下でキャリアを積んできた3者が個人的な経験をもとに20分程度の短いレクチャーで現状報告と問題提起を行った。短い質疑応答と休憩を挟んだ後、参加者全員を4つのグループに分け、それを何度もシャッフルし出来るだけ多くの人と意見を交換するワールドカフェ形式で互いの思考を刺激し合った。その際、各グループで話し合った話題は以下のとおり。
 ●3者の発表で印象に残ったキーワードや感想を述べ合う
 ●10年後の自分と、その時の職場の状況を(できるだけ具体的に)想像してみる
 ●その時、教育普及活動はどうなっていると思うか、想像してみる
 ●想像した状況に近づける(ネガティブな予測だった場合は遠ざける)ために、今できること、
  取り組むべきことを考えてみる
 日頃、眼前の仕事に振り回されている状況から離れて、2026年の自分を想像する=中長期的に物事を眺める視点を持つ時間は、ベテラン学芸員にとっても若手学芸員にとっても有用だったようだ。思考の共有のために用意した模造紙や付せんには「悩んだらその事業が誰/何の為なのか常に立ち戻って考える」「学芸員が楽しめない事業を参加者が楽しく思う訳がない」などの言葉もあれば、「職場での意見共有をマメに行う」「意見が通りやすくなるよう、偉くなる」などの具体的な目標とも読める一節もあった。一方、「非正規で10年後の想像なんて全く出来ない。この業界から離れるかもしれない」という切実な意見もあった。
 2日目は、前回会合で初めて取り組んだ「ビブリオバトル」なるワークショップを再び行った。
 書籍の選定基準は前回と同じく“美術館の教育普及の考え方に関連する(と各自が思って読み、面白かった)本”としたが、今回もバラエティに富んだジャンルから紹介があり、それぞれの本との出会いのエピソードや着眼点の面白さ、内容に対する解釈、ユーモアに富んだプレゼンテーションなど、引き込まれる要素にあふれていた。なお今回、決勝戦で紹介された書籍は、相良敦子『お母さんの「敏感期」』、テクタイル(仲谷正史・筧康明・三原聡一郎・南澤孝太)『触楽入門 はじめて世界に触れるときのように』、西村佳哲『かかわり方のまなび方 ワークショップとファシリテーションの現場から』の3冊であった。
 会合終了後は各自で、開催中のあいちトリエンナーレ2016[名古屋市美術館ほか愛知県内各会場]を見学した。 
(報告者:名古屋市美術館 清家三智)

出席者

会員17名
オブザーバー6名
事務局1名
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