会長から会員館の皆様へ

会員館の皆さまへ

 新型コロナウィルスの蔓延は美術館にも深刻な影響をもたらしています。感染防止のために多くの展覧会は中止や延期を余儀なくされ、展示を終えたまま開幕できないでいるようなケースも少なくありません。先般ご連絡を差し上げましたように、今年の5月に開催される予定であった全国美術館の京都での総会も来年度に順延せざるをえなくなりました。しかし従来の任意団体から一般社団法人へと全美を移行させたために、今年度も総会を開催する必要があり、司法書士とも相談の上、過半数以上の会員の委任状(もしくは同意書)を得た上で、正副会長3名のみの出席による総会を東京で開催することにいたしました。詳細は近日中にお知らせしますが、感染防止のためのやむを得ぬ方法として、よろしくご了承下さい。 
 この全美が始まって以来の非常時ともいうべき状況は、私たちにとって市民社会に対して美術館が担っている役割を改めて考え直す機会でもありうるでしょう。本来なら文化芸術の力で困難な事態に直面している人々の心を癒し、また勇気づけること、コミュニティーの核となることが私たちに期待されているはずですが、肝心の展覧会の開催が難しいのでは、そうした使命をはたすこともままなりません。
 しかしいかに制約が多いとはいえ、美術館は活動自体を休止してはならないはずです。こうした状況下にあっても可能なこと、いやむしろ積極的に取り組まなければならないことがあるのではないでしょうか。たとえばオンラインによる発信や双方向的なコミュニケーションは最近は技術的にも容易になっており、危機が収まるまでの間、静止画や動画、学芸員や作家のトークなどで多面的な情報提供をすることはできるでしょう。もちろん展覧会に代わりうるものではないにしても、アクセスした方が再開の日が待ち遠しいという気持ちになってもらえればうれしい話ですし、また将来、拡大していくにちがいないデジタルメディアへの試行錯誤的な挑戦が美術館人のリテラシーを増すことにもなるでしょう。
 全国美術館会議では、一般の方々にもメッセージを出す予定です。多くの美術館は決して休眠しているわけではなく、できる限り美術の情報に触れていただくための努力をして本来の活動に復帰する日に備えていること、また医療の現場の一線で献身的な働きをしている方々に深く感謝していることを、今の時点で表明しておく必要があると考えたからです。皆様もくれぐれも健康の維持にご留意ください。来年の京都総会での再会を心待ちにしております。

  2020年4月29日
                                 一般社団法人全国美術館会議
                                  代表理事 会長 建 畠   晢
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