保存研究部会過去の活動

日時
2011年11月18日(金) ~2011年11月19日(土)
場所
栃木県立美術館

第40回保存研究部会会合報告


日 程

2011年11月18日 (金)
13:30~
「栃木県立美術館バックヤード・展示室等の見学」木村恵理子(栃木県立美術館)展示室、収蔵庫回りを見学。来年開館40周年を迎える。何回か増築や改修を行っており、3年前には耐震工事を行った。これが功を奏して、先の地震では被害を最小にとどめることができた。マイセン展示室では、地震の際作品が倒れて損傷した作品があった。
その後県に予算要求し免震台を購入することができた。免震台の天板部にはEXガードやテグスで固定できるようアクリルや木板を嵌め込めるようにした。常設展示スペースでは、助成を受け照明を蛍光灯型改良タイプとスポットタイプのLEDに交換した。落ち着きを持たすため、少し橙色を帯びた色とした。業者は丹青社系列の会社。

14:45~
「東日本大震災の被災支援に関しての活動報告」伊藤由美(神奈川県立近代美術館)
主に、石巻文化センターと陸前高田市立博物館の被災美術品レスキューについて、簡単な報告があった。救援委員会と全美事務局の多大なる尽力により、全国の美術館学芸員や保存修復関係者等が集まり、組織化されたレスキュー活動を行うことができた。

15:45~
「東日本大震災の被災状況報告と防災について」鈴木誠一(郡山市立美術館)
倒れてくる棚や書籍をかき分け、ようやく展示室にたどり着いた時には、監視員の誘導によりお客様は無事屋外へ避難されていた。作品の大きな被害はなかったが、ライトや空調のダクト、点検口のふたなど、外れたり落下したものがあった。他の施設では、足の長いタイプのライトがかなり落下したという情報があった。
美術館職員は、美術館に割り当てられた避難所に配備され、女性職員は日中炊き出しの対応、男性職員は夜間の当番の対応に追われ、美術館内の被害状況や今後の活動の準備などの業務は後回しにせざるを得なかった。そのような状況で、時間をかけて館の状況を確認する余裕がなく、被害状況が3.11の揺れによるものなのか、余震によるものか定かではない部分もある。
美術館以外の施設(市役所)に貸し出していた作品も被災し、レスキューを求められた。
また、原発問題で校外活動が少なくなったので、美術館を利用したい、早く再開してほしいとの声が校長会から上がり市役所に要望として伝えられた。再開後は想定より多くのお客様の来館があった。文化を求めている市民の心の表れかもしれない。
宮城県美や岩手県美でも再開後の来館者は思ったより多く来ている。

その他、下記の報告があった。
三重県美には陸前高田の小学校にて被災した作品4点を修復処置のため預かっている。
平成23年度はレスキューのための出張旅費が出るが、24年度も引き続き全美からの協力が得られるよう要求している。

17:30~18:30
「コンディション・レポート作成について」全体討議      
準備されたひな形を配布し、各館で使用してみてその感想を集約する。
11月19日(土)
9:30~ 
「彫刻の修復と保存・展示について」藤原徹(東北芸術工科大学)
藤原氏が携わった、栃木県立美術館収蔵作品の修復を題材に修復方法、日常の手入れについてなどお話しいただいた。屋外ブロンズ彫刻の手入れは、バケツ一杯の水に中性洗剤を一滴たらした程度の水で、ブラシや布などを使って洗う。ワックスがけは、夏場の太陽でブロンズが熱せられているときに行うと手軽で効果的とのこと。屋内作品もまめに埃を取るなどの手入れをしてあげることが大事である。
現代の立体作品は、様々な素材、技法が用いられる中、表現重視で不安定で危険な作品も多い。作家にも強度を考えてもらい、購入する時点で館側がどこまで改良して良いのか、また再制作についての考え方など事前に作家と意見交換するなどが必要だろう。

11:15~
「大災害時における対策等に関する要綱」等改定案の検討 堀宜雄(福島県立美術館)
阪神大震災後、災害時に全美からサポートに行くということを全体で認識するためにできた要綱。今後の改定では、何を目指すのかその方向性を明確にしておくことが必要。
ブロック館について、全美から再度各館に周知いただき、ブロック館同士は事前に災害時のシミュレーションなど行ってはどうか、などの要望と意見があった。ちなみに、東海ブロックでは震度5以上の場合連絡することとしている。
また、県立レベルであれば会員・非会員に関わらず、県下の小規模館の情報収集もすべきだろう。また、どういうケースの場合レスキューを頼むのかある程度指針が必要だろう。

全美へ寄せられた義援金について事務局から使用用途について提案を求められている。放射線測定器は購入予定である。復興の名目であれば年度を超えても良いとされている。提案は事務局に挙げ、了承されればその都度執行する。

12:15~12:30
予算執行状況や活動についての確認、次回会合などについての事務連絡

山梨県立美術館 高野さんより、額装業者の選定方法について、各館の状況伺いがあった。

今後の活動については、ファシリティレポートを引き続き検討するほか「災害時の必要資材リスト」を整理、「水害時の作品の対応について―その傾向と対策」は、部会員の意見を収集しとりまとめていく予定である。

次回会合は山梨県立美術館と山梨県立博物館にて2月下旬から3月上旬頃に開催予定。


出席者:19名

企画監事:木村恵理子(栃木県立美術館)
事務幹事:伊藤 由美(神奈川県立近代美術館)
     影山 千夏 (高知県立美術館)  
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