保存研究部会過去の活動

日時
2014年10月7日(火) ~2014年10月8日(水)
場所
碧南市藤井達吉現代美術館、大浜まちかどサロン

第44回保存研究部会会合報告

10月7日(火)
 13:45  美術館1階ロビーに集合し、大浜まちかどサロン2階に移動。
 14:00~15:20 レクチャー
 15:30~17:00 質疑応答、ディスカッション
 17:10~18:00 碧南市藤井達吉現代美術館のバックヤード、展示室視察
 18:30~ 碧南駅前の「大正館」にて情報交換会
10月8日(水)
  9:30~10:50  コンディションチェックシートについて
 11:00~11:45 連絡事項等

レクチャー

「美術館・博物館における保存修復、現代美術作品及び写真の保存について」
  講師:国立民族学博物館名誉教授、東京藝術大学客員教授・森田恒之氏  
 
 国内の博物館・美術館における初の館専属コンサヴァターとしてご活躍された森田恒之氏に、現代美術作品における保存修復の実例や様々な問題についてお話いただきました。技法が多様化している現代美術作品については、作者から直接情報を得ることが大切であることに加え、作者自身が意識していない技術的問題(例:同一メーカーで同一商品名でも組成が異なる場合がある、など)も存在するため、科学史や産業技術史をはじめ周辺情報の収集も必要という重要なご指摘がありました。なお、ご講演の内容はビデオ撮影の許可をいただき記録しました。
 講演終了後のディスカッションでは、耐久消費財を使った作品、写真、アクリル絵具、香料を使う作品等々、保存修復の難しい現代美術作品について会員から事例紹介があったほか、作者が死亡している場合の情報収集の難しさなども話題に挙がりました。

碧南市藤井達吉現代美術館のバックヤード、展示室視察

 碧南市藤井達吉現代美術館の安藤さん・土生さん・大長さんのご案内により、同館のバックヤードツアーが行われました。
 「大浜まちかどサロン」を出発し、旧商工会議所の建物が活用されている美術館の外観を説明いただいたのち、搬出入口、地階(情報コーナー、創作室、展示室(常設展示)、1階(エントランスホール)、2階展示室(企画展示「メタルズ!―変容する金属の美―」)の順に見学。ここで2班に分かれ、1班ずつ収蔵庫内を見学させていただきました。
 壁に珪藻土が使われている収蔵庫は、ラべリングや整頓が行き届いており、地震対策もしっかり行われていた様子が印象的でした。最後に全員で1階展示室(企画展示)と多目的室(企画展会場として使用中)を見学しました。






連絡事項等

1. 総合調査分科会について
  分科会幹事の田中さんから、報告書配布完了の報告がありました(分科会自体はまだ存続
 中)。また、在庫が1,700冊あるので、会員館でさらに必要な場合は申し出てほしいこと、全
 国博物館協会への配布や大規模館への再配布(レスキュー事業記録集と一緒に)などを検討し
 ていることなどの連絡がありました。
2. 次回会合について
  2月に高知県立美術館で開催。講師は写真修復家の白岩洋子氏にお願いする予定です。他にも
 写真に関する協議事項や話題などがあれば、事務幹事宛てに知らせてください。また、前回会合
 で話題に挙がった写真のワーキンググループ作りについては、事務幹事から影山さんに再度確認
 します。
3. 賛助会員からのプレゼン希望について
  全美賛助会員の関西ペイントさんから、保存研究部会で製品プレゼンをしたいとの要望があり
 ましたが、今回は時間的な余裕がないためお断りしました。代わりに事務幹事が直接お話をうか
 がい、資料提供を受けましたので、関心のある方は個別にご連絡ください。なお、今後同様の要
 望が寄せられた場合も、原則として部会でのプレゼンは受け入れないことになりました。
4. 部会費について
  2013年度から部会費残額の積立てが可能になりました。これにより、ある程度まとまった金
 額を必要とする活動にも対応できますが、今後そうした活動(例えばコンディションチェックシ
 ートの使用・凡例集冊子作成など)を行っていくか、ご意見をお寄せください(次回会合でも引
 き続き協議)。
5. 部会所蔵図書について
  前回会合以来、岩手県美で預かっていた図書を、今回の会合にあわせて碧南現美へ送り、部会
 開催中に皆さんに自由に閲覧していただきました。図書は引き続き同館で預かっていただき、次
 回会合までの貸出等は安藤さんにご対応をお願いすることになりました。
6. 学芸員研修会について
  事務局から、コンディションチェックシートのお披露目を兼ねた研修会を開催してどうかとの
 提案がありました(今年度の研修会は情報・資料研究部会が担当)。当部会としては、再来年度
 (2017年3月)の開催を目標とすることにしました。今年度から来年度にかけては、コンディシ
 ョンチェックシートの試用と修正等を行います。

コンディションチェックシートについて

 本テーマの協議は、第42回会合(2012年7月)を最後に2年以上中断していたため、最初に田中さん(三重県美)から、これまでの経緯を改めてご説明いただきました。その後、協議継続中の洋画用チェックシートに加え、堀さん(福島県美)、佐野さん(岐阜県陶芸美)に新たに作成いただいた日本画用(額、巻子、軸(竪物/横福)、屏風(二曲/六曲))、工芸用(2種類)シートについても意見交換を行いました。主な意見は以下のとおり。
(洋画)
 ・実際に使ってみた感想としては、①細かい調書を作るよりデジカメ撮影した方が確実、②注意
  事項はできれば表紙に明記したい(さらに言えば、梱包材や箱に直接明記したい)、③4/4ペ
  ージへの記入事項は気づかれにくい、④A3両面印刷にした方がバラバラにならず便利、など
  が挙げられる(田中)
 ・チェックシートの使用方法と具体的症例を付けることが今後の課題(田中)
 ※洋画のコンディションチェックシートについては、各館で試験運用を始めていただき、修正を
  加えていく段階に入ります(A3で出力できるよう田中さんに設定をお願い)。
(日本画)
 ・巻子用など、もう少し書き込めるスペースが欲しい(兵庫県美・相澤)
 ・箱は別ページにまとめては?(伊藤)
  → 洋画用チェックシートの3/4ページを差し替える形式で作成したので、できればこれ以上
   ページ数を増やさない方がよいと思う(堀)
(工芸)
 ・岐阜陶芸美で使用している形式をもとに2種類作成した。現状の問題点として、①工芸品は付
  属品項目が多く、チェック項目にスペースを取られ、書き込めるスペースが少なくなってしま
  う、②付属品の呼称が統一されていない、③状態チェック項目の使い勝手が不明、などがある
  (佐野)
 ・呼称については、フォーマット確定後に凡例を作り、後は各館でカスタマイズしてもらうこと
  が必要では(伊藤)
 ・工芸も洋画用チェックシートのパターンをアレンジする形で考えてみては(堀)
(その他)
 ・借用点数が多い場合などには、所蔵者に全部のシートにサインをもらうのは現実として難しい
  のでは?(神奈川近美・伊藤)
  → 事故防止のためにもサインはもらっておきたい。特に問題になりそうな箇所は、相手にも
   伝えておく必要がある(相澤)
  → 所蔵者にチェックシートのカーボンコピーを残す方法もある(岩手県美・根本)
  → ポジを高精細画像で手元に残しておくと、見落としがあっても画像で確認できる場合もあ
   る(堀)
 ・海外からの借用もあるので、英語を併記してほしい(国立国際・植松)
  → 情報を入れすぎると煩雑になるので、できれば英語版は別に作ってほしい(田中)
 ・立体作品用も洋画用シートのアレンジで作成可能か、藤原氏に問い合わせてみる(相澤) 

出席者

出席者12名、オブザーバー5名(うち7日のみ1名、8日のみ1名)、事務局1名
 
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