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当館は本土最南端の地、串本無量寺の境内に在る。「寺に伝わる宝物を大切にする」という単純素朴な発想から、地域の人々の全面的協力により日本で一番小さい美術館として誕生した。昭和36年11月の開館である。現代では珍しい精神共同体的所産であり美術館建設のケースとしては異例に属する。設計に当っては特に既存の寺院建築との融和に苦心があった。鉄筋コンクリート造平家建高床式2棟(建築面積363平方メートル)で展示室は5室にわかれ、応挙・芦雪を主とする近世絵画を展示しているが、最近若い人たちの来館が目立って多くなり、水墨画と現代のヤングたちが、どうつながっているのか興味ある問題である。一つの冒険ではあったが現代彫刻の収集をはかり、墨画と対比する新しい展示空間を設定し好評を呼んでいる。この小美術館は伝統的文化にかかわるだけでなく、あたらしい現代の文化的状況にも深くかかわって存在すべきであると希っている。 |
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収蔵作品の中心となるものは、重要文化財「方丈障壁画」(円山応挙筆、山水画・波上群仙図、長沢芦雪筆、龍虎図・唐子遊図・群鶴図)墨画襖絵55面であり、もと無量寺本堂にあったと同じ配置に復元し、畳の上に坐った視点でみられるように配慮されてある。次に無量寺の什宝として伝来されてきた明兆を始めとする山雪・探幽・松徳・等的・木庵・宗精・柏巌・白隠・若沖などの近世絵画・墨蹟96点。開館后の収集による熊谷守一・落合朗風・上甲平谷や,独人クルト・ブラッシュが絶賛する異色の水墨画家広瀬楚庵(遺族より遺作の一括寄託の申し出がある)などの現代絵画・書作品に加えて松村外次郎(二紀会)堀義雄(二紀)酒井良(新制作)の多様な現代彫刻作品(木彫・ブロンズ・石彫・乾漆)61点がある。以上のほかに、地域文化の厚さを物語る地元串本町笠嶋泥炭遺跡出土の考古資料(古代漁労遺物・舟型木器類・縄文弥生期の土器・石器など)1584点が収蔵されている。
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