教育普及研究部会過去の活動

日時
2025年3月6日(木)
10:00~15:00
場所
ウェブ会議システムZoomによるオンライン開催

第62回教育普及研究部会会合報告

内容

・部会長挨拶 小坂智子(部会長/長崎県美術館長)
・会合趣旨説明、発表者の紹介
・事例発表 ① 「工芸トークオンラインの試み」今井陽子(国立工芸館主任研究員)
・事例発表 ② 「坂本善三美術館×森美術館の連携活動」
                      山下弘子(坂本善三美術館学芸員)
                      白木栄世(森美術館ラーニング・キュレーター)
・質疑応答
・グループディスカッション、全体共有
・閉会挨拶 (部会長・小坂智子氏)
・事務連絡

 令和6年度第2回・通算第62回会合は、「オンラインでつながる美術館の教育普及活動」と題し、オンラインが定期的・継続的に用いられることで、人や組織との新たなネットワークが形成されている2つの活動事例を3人の担当者の方々よりご紹介いただいた。その後、Zoomのブレイクアウトルーム機能を用いて9つの小グループに分かれて、会員間でのディスカッションと交流の機会を持った。
 事例発表①は、「工芸トークオンラインの試み」と題して今井陽子氏(国立工芸館主任研究員)よりお話しいただいた。工芸トークオンラインは、2021年秋から毎月4回程度、現在まで継続して実施されている。現在、この活動を教育普及室の皆さんとともに担っているのは、同館が金沢市へ移転する以前から活動する13人のボランティアによるガイドスタッフ(通称、東京メンバー)の皆さん。その前提あるいは土台には、2004年〜19年まで東京で開催してきた「タッチ&トーク」の蓄積がある。「タッチ&トーク」における触察と対話という事象を分解し、再構築するようにトークオンラインの検討が重ねられた。複数の高精細画像を用いた見せ方(視点)や対話の工夫といった具体例とともに、運営体制から事前準備、企画概要(ねらい)、参加者の属性と反響、そして手応えまで詳しくご紹介いただいた。
 事例発表②は、「坂本善三美術館×森美術館の連携活動」と題して山下弘子氏(坂本善三美術館学芸員)、白木栄世氏(森美術館ラーニング・キュレーター)よりお話しいただいた。両館の連携の始まりは、2021年に開催された森美術館のラーニング・プログラム「まちと美術館のプログラム『アート・キャンプ for under 22 Vol.6 IN/BETWEEN:美術館をつなぐ』」に遡る。同プログラムには、森美術館で募集した13歳から22歳の国内外に暮らすユース世代と、おぐに美術部(小国中学校の美術部がなくなったことを受けて、小国町教育委員会と坂本善三美術館の主催で始まった地域の部活動)の中高生が参加した。白木さんからは、この連携が実現に至るまでに約1年におよぶ山下さんとの対話の積み重ねがあり、各館のミッションやリソースを再確認するとともに、連携のために何かを新しく作り出すのではなくお互いの良さに対する信頼関係を土台として企画が立ち上がったこと。そして、それぞれの美術館に集うユース世代の参加者がつながり、さまざまなアートの在り方を体験しながら交流した概要について、コロナ禍における印象的なエピソードとともにご紹介いただいた。続いて山下さんより、坂本善三美術館の立場から「美術館が繋がることでどういうことが起こったのか?」を振り返りつつ、連携活動3年目となる2023年に実現した展覧会「『コレクション・リーディングVol.7 おぐに美術部と作る善三展「好きなものを好きって言う」』with森美術館」について。連携の構造から、オンラインで繋がりながらもリアリティを持って一緒に活動するためになされた工夫、展覧会の作られ方から概要まで。坂本善三美術館とおぐに美術部、森美術館、アーティスト、そして地域の方々等。美術館をとりまくさまざまな人々との関わりも含めてご紹介いただいた。
 2つの事例発表の後には、例えば①については、オンラインでも参加者の居住地域に特徴があることへの驚きや、告知方法について。また、遠隔地から運営するスタッフのモチベーションの維持や準備の際の工夫について。②については、連携プログラムがそれぞれの館や参加者に与えた変化をどのように捉えているか。といった活発な質疑応答が行われた。
 昼休憩を挟んだ午後のディスカッションでは、所属する館の地域や規模、オンライン・プログラムの経験値が多様なメンバーによる小グループで、自己紹介や感想共有、情報共有を行うとともに、「つながり方」をテーマに「誰と、なぜ、どうやってつながりたいか」について意見を交わした。
 終了後のアンケートには、「非常に丁寧な事業の組み立てがうかがわれ、なかなか真似できないなとは思いながらも、エッセンスは参考にできそうで、大きな学びになりました」「オンライン・対面両方のケースの話を聞くことが出来、勉強になりました。まずは目的・目標をしっかり定め、そのうえでそれぞれのツールを使い分けることが重要であると改めて実感できました」「オンライン・プログラムがテーマの場合、技術的な話題に偏ってしまうことも多いですが、今回は『どうやって連携するのか?』『なぜオンラインなのか?』といった根本的な目的に焦点を当てた事例発表で大変参考になりました」「今後、デジタルネイティブ世代が社会に出て多数になった先の、美術館のあり方、つながり方について考えていくことも大切ということも頷くものでした」等の感想が寄せられた。
 なお、事例発表を含む午前の映像は、動画共有プラットフォームVimeo上で部会員に向けて公開した(期間:3月11日~4月12日、視聴回数32回)。
(報告者:教育普及研究部会幹事/アーティゾン美術館 細矢 芳)
 
 

出席者

午前75名(ERGメンバー69名、オブザーバー5名、、事務局1名)
午後53名(ERGメンバー52名、事務局1名)
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