第39回美術館運営研究部会会合報告

内 容

1 想定される博物館法の学芸員制度の改正にむけた活動について
2 2017年に発行した『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』の改訂について
   
 2025年1月のオンライン開催から5か月後、総会の翌日に開催した。
「学芸員制度」については、2027年2~3月に予定されている美術館運営研究部会担当の学芸員研修会で取り上げられるテーマとなるかもしれないことから、それを踏まえた討論が行われた。それについて、次のような課題があることを確認した。
◎「学芸員」の位置づけをどうするか。
 学芸員を研究職に位置づけている館とそうでない館(公立で言えば一般行政職)があり、そうでない館が多いという現状がある。同一美術館でも、研究職の学芸員とそうでない学芸員が混在する館がある。任期付き学芸員も増えている。また、同一所管に複数の美術館がある場合、他館への異動、学芸員の首長部局や教育委員会への異動の問題もある。それを肯定的に捉える人と否定的に捉える人がいる。
◎現行制度の「学芸員」の上に「上級学芸員」のようなものを設ける必要があるか。
 「上級学芸員」については、全美の加盟館の学芸員は必要ないという意見が多いが、他の博物館の学芸員は必ずしもそうではない。「上級学芸員」を設けて、「上級学芸員」にだけ、科研費における研究者番号を付与するという意見もあり、慎重に検討しなければならない。
◎館長、副館長の位置づけをどうするのが望ましいか。
 現状では、常勤館長の他に、契約による館長、非常勤館長などがあるが、近年、館長とは別に特別館長、特任館長を設ける美術館が増えている。行政の副館長と学芸の副館長を設けている美術館もある。
◎公立美術館の運営制度について
 公立美術館では、美術館を所管しているのが首長部局か教育委員会か、首長部局でもどういう部課か、また、指定管理か。指定管理でも公募で選定しているか、その自治体が設置している財団に委託しているのかで美術館のありようはかなり変わる。
「行動指針」については、『行動指針』の付則に「全国美術館会議は、5年ごとに、理事会及び総会において、この「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」の見直しを行い、改定された場合はただちにこれを発表する。」「全国美術館会議の理事会は、その見直しの作業を美術館運営制度研究部会(現、美術館運営研究部会)に委嘱することができる。」と記されているが、現状、何も検討していない。「行動指針」については、ICOMの「職業倫理規程」の改訂がまもなく完了し、それが各国で自国語に翻訳される。それを踏まえて、日本博物館協会の「博物館の原則」と「博物館関係者の行動規範」も改訂されると思われるので、その流れを見て動くということでいいのではないかという結論になった。
そこで、今年度中に、「学芸員制度」などについての小テーマを設けての検討会(WG:ワーキンググループ)を設置して、個別の議論の場を設けることになった。若手メンバー(青木、山本、大浦、柳澤)で準備会合を近日中に開き、それを部会で共有し、外部講師も招いて、公開のオンライン勉強会を実施する。それを、来年度の学芸員研修会へと展開していきたい。
(文責:浅野秀剛)

出席者:11名

安田篤生(部会長、高知県立美術館)
浅野秀剛(部会幹事、大和文華館)
大浦周(埼玉県立近代美術館)…オンライン参加
貝塚健(千葉県立美術館)
笠嶋忠幸(出光美術館)
大島徹也(多摩美術大学美術館)
山本雅美(奈良県立美術館)
不動美里(和歌山県立近代美術館)
青木加苗(和歌山県立近代美術館)
柳澤宏美(高知県立美術館)…オンライン参加
小坂智子(長崎県美術館) 

美術館運営研究部会過去の活動

日時
2025年6月5日(木)
10:00~12:00
場所
iichiko総合文化センター
4階 小会議室4