第61回保存研究部会会合報告

内 容

8月25日(月)1日目
14:30~14:40 開会挨拶 木本文平部会長(碧南市藤井達吉現代美術館)
14:10~15:30 講演「プラド美術館 諸指針と仕事概要」
        講師:和田美奈子氏(スペイン プラド美術館 紙修復士)
 和田美奈子さんより、プラド美術館の諸指針と仕事概要についてご講演いただきました。はじめに、職員数や所蔵点数、所蔵場所などの概要についてご説明いただき、続いて、世界中からくる膨大な借用依頼に対して、どのような方針と手続きを経て貸出を決定するのかといった貸出の流れ、紙作品を貸し出す際のマット装・額装に用いる資材と額装方法、クレートの仕様、クーリエ方針や貸出先での展示方針、また、展示室の照明や空調の改装などの省エネルギー対策事例とその成果についてお話いただきました。
 その後、保存修復室全体の体制、修復家の多岐にわたる仕事内容、修復方針や基準の決定方法についてもお話いただきました。

16:00~16:40 質疑応答
 講演後の質疑応答では、スペインの国立館で国家公務員として仕事を得る基準について、分散している建物間の行き来に寄る職員のコミュニケーションの取り方、貸出クーリエを決める基準、修復方針を決定する会議について、寄贈を受ける基準について、予算の出どころ、情報の管理など、沢山の質問がでました。 
8月26日(火)2日目
9:30~10:30 協議、連絡事項 
1.次期幹事について
  昨年度より幹事体制の輪番制を開始し、東日本/西日本地域から、それぞれ事務幹事と企画幹事を各1名
 ずつ、計4名で幹事を担当しています。今回の話し合いでは2027(令和9)年度の東日本・西日本事務幹事と、
 2028(令和10)年度の西日本事務幹事について、部会合未開催館を中心に検討をお願いしました。施設の改
 修など各館のご事情があるなかで、名簿更新のアンケートなどを活用して継続的に今後の幹事引き受け希望
 について意志確認をしていく必要性が感じられました。
2.今年度の残りの予定
 (1) 今年度第2回部会合@国立国際美術館(大阪万博終了以降の秋~冬を検討中)
 (2) 名簿改定・配布(12月末)
 (3) 部会員継続意思アンケート(3月末頃)→名簿改定・配布(4月上旬)
 (4) 事務幹事引継ぎ(3月末)
3.部会規約の作成について
  現在の保存部会内規は2008年に作成されたものであり、現状に即して変更する必要があることから、今後
 アンケート形式で部会員に意見を募ったうえで、今年度中に規約を作成する方針を確認しました。部会保有
 口座についても、代表者は事務幹事(通帳管理者)とし、事務幹事交代ごとに都度手続きを行うことを現事務
 幹事より提案しました。
4.「エキヒュームS®」取扱終了に伴う現在の各館の状況に
 ついて
  昨年度の第60回会合でも議題に上がったエキヒューム
 S問題に関して、昨年度末で取扱が終了したことを受けて
 いくつかの感から現在の状況を口頭で報告してもらい、
 情報共有を行いました。現状としては定期的な館内ガス
 燻蒸をやめてIPMに切り替えた館や脱酸素処置に切り替
 える館が多く見られましたが、予算や時間の問題など、
 課題も上がりました。

10:40~12:30 バックヤードツアー
 企画幹事・邊牟木さんと国立西洋美術館・本保さん、渡辺さんのご案内で、バックヤードツアーを実施しました。収蔵庫のほか、トラックヤード、彫刻修復室、科学研究室、絵画・紙修復室や写場を見学しました。現在進められている収蔵作品の額装の修復とグレージングの新規取付の計画についてのほか、小さな装飾工芸品の保管に関する工夫や過去の修復作品についても実際の作品を見ながらご説明いただき、国立西洋美術館さんの長年にわたる資料収集と保存修復の歴史の積み重ねが感じられる場となりました。
充実した設備だけではなく、グレージングの制作や作品の保管方法など至るところに細やかな工夫が見られ、自身の業務の参考にするために熱心に記録する参加者が多くみられました。

10:40~12:30 閉会挨拶 木本文平部会長(碧南市藤井達吉現代美術館)

(報告者:千葉県立美術館 神野有紗、広島県立美術館 岡地智子)

出席者

1日目:部会員36名、オブザーバー25名、事務局1名
2日目:協議事項 部会員31名、事務局1名
   バックヤードツアー 部会員33名、オブザーバー13名、事務局1名




 

保存研究部会過去の活動

日時
2025年8月25日(月) ~2025年8月26日(火)
場所
国立西洋美術館
講堂