地域美術研究部会

日時
2019年12月11日(水) ~2019年12月12日(木)
場所
板橋区立美術館、練馬区立美術館

第11回地域美術研究部会会合報告

 第11回会合は、12月11日に板橋区立美術館、12日に練馬区立美術館で開催された。
 板橋区立美術館では、まず「小さなデザイン 駒形克巳展」の鑑賞時間が設けられた。14時から部会長・西村勇晴氏より開会の挨拶、板橋区立美術館館長・池田雄史氏よりご挨拶いただいたのち、学芸員・松岡希代子氏より美術館の紹介が行われた。区立美術館の第一号として所蔵品のない所謂「箱もの」としての出発であったこと、所蔵品の問題に加え都心から遠いなどの不利を逆手に取り、「隙間」を狙った所蔵品の収集と館の方針が形成されていった過程をテンポよくお話いただいた。続いて学芸員の弘中智子氏より、近代美術のコレクションの形成について発表があった。今まで開催された展覧会のお話と、様々なタイミングで所蔵された重要な作品に関して、本会合の参加者の中から当時を知る方々への質問も交え進行された。休憩後には最近収蔵された絵画や資料など数点を拝見する機会も設けられ、各参加者の今後の研究につながる機会ともなった。
 2日目の練馬区立美術館では、学芸員の加藤より美術館の紹介、次いで喜夛より当館の地域美術への取り組みについて発表があった。
当館では開館当初の学芸が行った区内作家調査が引き継がれていない点、展覧会開催とセットになった収集や寄贈に頼る現状の問題を踏まえ、近年の地域作家を取り上げた展覧会について紹介。続いて真子の方から教育普及の立場で地域の作家を紹介している様子を、展覧会、スクールプログラム、所蔵品カードなど具体的な事例から紹介した。また閉会後には、開催中の「没後10年品川工展 組み合わせのフォルム」をご鑑賞いただいた。
板橋区立美術館は美術館の一つの柱として近代美術を掲げ、展覧会もシリーズ化することで継続した姿勢を示していた。加えて近隣の豊島区、新宿区との連携の可能性についても言及され、地域美術の方向性が明確であった。対して練馬区立美術館は歴代の学芸員の興味から開催された作家の個展の積み重ねという面が強く、地域美術と言ったときの方向性はやや曖昧である。そもそも東京都内における「地域」のとらえ方は難しく、区立美術館が「地域」を重視するべきなのかという疑問も存在する。長く美術館の活動が続くことで、その活動自体が「地域美術」となる可能性もあり、それぞれの館がそれぞれの「地域美術」を考えていけばよいのでは、との意見も出たところで閉会した。
(練馬区立美術館 真子みほ)

出席者:24名

部会長:西村勇晴(北九州市立美術館館長)
幹 事:山田 諭(京都市美術館) 
幹 事:藤崎 綾(広島県立美術館)
幹 事:奥村一郎(和歌山県立近代美術館)
幹 事:泰井 良(静岡県立美術館)
杉村浩哉(栃木県立美術館)
折井貴恵(川越市立美術館)
工藤香澄(横須賀美術館)
齊藤全人(たましん歴史・美術館)
藤森梨衣(たましん歴史・美術館)
渋谷展子(八王子市夢美術館)
林 彩子(八王子市夢美術館)
江川佳秀(徳島県立近代美術館)
井須圭太郎(新居浜市美術館
重松知美(北九州市立美術館)
発表者:松岡希代子、弘中智子(板橋区立美術館)
    加藤陽介、喜夛孝臣、真子みほ(練馬区立美術館)
オブザーバー:高木佳子(板橋区立美術館)
       白石顕子(板橋区立美術館)
       鈴木亜優(板橋区立美術館)
       渡辺俊夫(板橋区立美術館)
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