「新型コロナウィルス禍の状況下における美術館の開館について」全国美術館会議から意見表明をするにあたって

 一般社団法人全国美術館会議は、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が続く状況下で、困難な日常生活を強いられている人々にとっての美術館活動の意義に鑑みて、可能な限りの美術館活動の再開を望みながら、以下の意見を表明いたします。多種多様な美術館施設は、この状況下で、感染防止対策を十分に施しながらも、休館を余儀なくされている館、一定の制限のもとで活動再開をした館、変わらずに安らぎの場を提供している館など、現状の活動状態もさまざまに異なりますが、全国美術館会議は、こうした状況であるからこそ、一層美術館の果たす役割は大きいと考え、今回の意見表明を発出するに至りました。
 また、いくつかの公立美術館が休館を継続している大阪府の状況に鑑みて、大阪府知事吉村洋文氏宛に美術館再開のお願い文書を、全国美術館会議会長から送付しております。併せてご一読ください。

「新型コロナウィルス禍の状況下における美術館の開館について」

令和3年6月8日
 
 9都道府県における緊急事態宣言は6月2日以降も延長されることになりましたが、東京都は一定の条件下で美術館、博物館への休館要請を解除するなど、自治体ごとに、また施設ごとに開館、休館を巡る対応は異なっています。一般社団法人全国美術館会議(以下全美)にも様々な要望や意見が寄せられていますが、一律の方針を打ち出すのは難しいにせよ、新型コロナウイルス禍にあっても、いやそうであるからこそ、私たちは社会から活動の継続が求められているのだ、美術館は決して休眠してはならないという認識に立って、可能な限りの対策を講じていく所存です。
 全美は、国公立私立の美術館401館が集まる国内で唯一の美術館組織です。参加館は多種多様な展覧会、作品資料の収集、社会教育活動を展開して、地域の人々に美術鑑賞と理解の機会を提供し、豊かな生活の糧になるよう、工夫と努力を重ねてきました。しかし、現下の非常時は、そうした活動にシリアスな制約をもたらさずにはおきません。
 コロナ禍のもと、生命を守ることが最優先になるのは言うまでもありません。私たちがオンラインによる情報発信やワークショップなどに努めているのもそのためです。しかし美術館の存在理由は、なによりも実際の作品を目の当たりにすることのできる展覧会の開催にあります。三密を避けることや人流の抑制などの対策を十全に施しながら、人々が安心安全のうちに、美術館のギャラリーで展覧会を鑑賞できること。作品に触れる喜びと慰安を得ること。そうした時間は、むしろ今の時期にあってより大きな意味を持ち、日々の生活に潤いをもたらすものとしてより切実に求められているのではないでしょうか。また作品運送や展示、カタログの制作、看視、売店、レストランなどの業務に携わる方々など、幅広い分野での雇用に影響が及んでいることへの配慮も求められています。
 美術館は他の博物館施設と同様に、利用者と職員に対する感染防止、安全確保を最優先にした運営を続けており、今のところクラスター等の感染拡大に悪影響を及ぼす事例は発生しておりません。医療の現状など、地域によって事情は異なっており、全美として一概に開館を要請するものではありませんが、行政機関や民間の法人におかれましては、社会がこの困難な状況に屈せず、精神に活力を導き、コロナ後の未来への希望をもたらすためにも、是非とも開館を期待する声に耳を傾けていただくようお願い申し上げます。
一般社団法人全国美術館会議
緊急事態宣言下の美術館開館のお願い(大阪府知事宛)
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