大災害時における各ブロック本部館・副本部館連絡網会議 開催報告

 広域にわたる災害等に対応するため、全国美術館会議では会員館を10の地域に分け、ブロックごとに広域ブロック本部館と広域ブロック副本部館を定めています。災害対策委員会では、各ブロックの担当者とともに意見交換を行い、改善にむけた取り組みを例年行っています。
 今年度は愛知芸術文化センター(愛知県美術館)に会場を提供いただき、同館の平瀬副館長と佐々木災害対策委員長(宇都宮美術館長)の挨拶の後、災害対策委員による報告及びオンラインでの参加者を含めた全体の活発な意見交換が行われました。

内容

日時:2023年12月14日(木)14:00~16:30
場所:愛知芸術文化センター(愛知県美術館) アートスペースA会議室
議題:1.「全国美術館会議で行った激震地の総合調査から見えてくるもの」
          報告者:田中善明委員(サイトウミュージアム)
   2.「川崎市市民ミュージアム(KCM)の被災収蔵品レスキュー作業の現状について」
          報告者:邊牟木尚美委員(国立西洋美術館)
   3.「東海ブロック本部館・副本部館の事例について」 
          報告者:副田一穂委員(愛知県美術館)
 
 1.の報告では、全美のこれまでの災害対策活動の概要を説明し、その活動の一環として激震地域の美術館・博物館を対象とした総合調査報告書の有用性について紹介しました。加えて生島事務局次長作成による「一般社団法人全国美術館会議・大災害時における連絡網組織図(2023年8月現在)」について説明しました。
 2.の報告は、現在も継続している川崎市市民ミュージアム(KCM)の救援活動の進捗状況と今後の見通し等についてです。
 川崎市の能動的な取り組みにより、作業環境は清潔で作業しやすく、作品の安定化処置も進行していますが、全美からの参加者が激減しており、同じペースで作業を続けたとしても5年以上かかることが予想されます。現在全美が支援している作業(美術文芸部門)は冊子分離・記録作業や洗浄作業などで、特別な技術を必要としません。参加対象は登録館の学芸員だけでなく事務方や非常勤職員を含む誰でも参加可能であり、本レスキュー事業にかかる経費に関しても川崎市が全額負担しています。
 本救援活動の経験は、対象被災後の処置や環境整備の学びの機会となることから全国の登録館及び個人会員に拡大し、参加を呼びかけています。
 3.の報告は、東海ブロックでの活動事例についてです。
 大災害時における要綱と実施要領が1998年に成立後、三重県立美術館や愛知県美術館が本部館を担当してきましたが、2021年1月からは館の所在地や特性を考慮した輪番制で4つの県立美術館が本部館・副本部館を担当することに決定しました。
 また、2012年から例年3月11日に連絡訓練を実施しています。実施一週間前を目途に連絡訓練を行う旨を加盟館にファクシミリで通知し、本番を実施しています。ファクシミリという旧套的手法の有効性については、照会者不在の場合も、その日の出勤スタッフが気づき対応してもらえる利点があることなどが考えられます。

 報告後の協議では、輪番制が確立され、連絡訓練が機能している東海ブロックの事例を参照しながら、他のブロックでの現状と課題について意見交換しました。
 本部館、副本部館の分担の偏りや輪番制そのものの認識や理解が不足しているという地域や県単位で情報集約の主体になる会員館がないケースなど様々な課題が話し合われました。結論には至りませんでしたが、それぞれのブロックや県など地域の特性や実情を鑑みつつ、ブロック内で十分な協議の場を持ち、コミュニケーションを図ることが、今後の組織、連絡網構築に向けたアクションの第1歩となるという認識は出席者共通の思いでした。
(報告者:災害対策委員会委員/大分市美術館 菅 章)
 

出席者:30名

(内訳)災害対策委員会委員7名
    災害時連絡網組織の会場出席者9名
    災害時連絡網のオンライン参加者11名
    オブザーバー会場出席者1名
    オブザーバーオンライン参加者1名
    事務局1名 
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