保存研究部会過去の活動

日時
2015年2月12日(木) ~2015年2月13日(金)
場所
高知県立美術館

第45回保存研究部会会合報告

2月12日(木)
13:45 美術館1階ロビーに集合。

講演及び質疑応答・ディスカッション

14:00~16:00
「美術館における写真コレクションのケアと保存修復について」
  講師:白岩洋子氏/紙本・写真修復家    国内では数少ない写真の修復家である白岩洋子さんに、写真作品の構造や劣化要因、取扱いや修復事例に加え、デジタル写真の保存修復を取り巻く現状などについてお話をうかがいました。また、参考文献類や画像による技法の比較ができるウェブサイト、梱包資材の種類などの貴重な情報もご提供いただきました。
講演後のディスカッションでは、表面にアクリル板が貼られた作品(face mounting)の取扱いや修復、マウント方法、保管用資材の交換時期、cold storageなどについて質問や話題が挙がりました。

高知県立美術館のバックヤード等視察

16:10~18:00
 高知県立美術館の影山さんのご案内により、館内及びバックヤードツアーが行われました。
 2014年10月にリニューアル・オープンした2階の石元泰博展示室で、オープンに至る経緯や部屋の構造などを説明いただいたのち、書庫・作業エリア(美術館蔵書の他、石元氏の蔵書・資料類の保管・作業スペース。フィルム保管室前室にあたる)とフィルム保管室を見学しました。続いて空調機械室、搬出入口、各収蔵庫の順に見学。1階プロムナードでは、1998年の水害後に設置されたという防水パネル等も見せていただきました。石元展示室の端正な美しさが印象に残った一方で、既存施設の改修に伴う管理(特に空調管理)の難しさをはじめ、運営面での様々な問題についてのお話も大変参考になりました。また、収蔵庫での作品保管に地元産の和紙を活用されていた点は、高知ならではの工夫として興味深く拝見しました。

コンディションチェックシートについて

2月13日(金)9:30~11:20
◆洋画用、立体作品用フォーマットについてそれぞれ意見交換を行いました。
【洋画】
 前回会合後の修正案に山本さん(今回欠席)がさらにアレンジを加えてくださったバイリンガル案について協議しました。主な修正点は以下のとおり(★は今後全てのジャンルに共通して採用するフォーマット部分)
 ★点検者・所蔵者サイン欄(1頁)は2頁に移動。「特記事項」(2頁)は狭くし、一番下の関係
  各業者情報は4頁に移動
 ★各頁番号は削除(A3両面1枚になったため、番号が不要となった)
 ★借用先連絡先に担当者のメールアドレスを追加
 ★「対応・処置記録」(4頁)スペースを減らし、白紙部分を増やす(特殊な形状の額等、その
  場でスケッチが必要になる場合もある)/「対応・処置記録」の罫線削除
 ★「梱包箱」「輸送用クレート」などは全て「輸送箱(crate)」に統一
 ★英字部分の色を薄くする
  ・「附属品」(2頁):黄袋、タトウはチェックボックス設定
  ・「額装」(2頁):「あり」「なし」のチェックボックス設定/「アクリル」はやめて「ポ
   リカーボネイト」をいれる
  ・「取り扱い…注意点」(2頁):「寸法」は削除(項目重複)/「ラテックス手袋または」
   の部分を削除

【立体作品】
 相澤さんに新たに作成いただいた案(洋画用フォーマットに倣ったもの)について意見交換を行いました。相澤さんからの説明と主な意見は以下のとおり。
 ・作成にあたり、藤原さんと大原秀行さんに相談した。藤原さんから「立体作品の場合、全方向
  からの画像が無いものが多いので、白紙に直接絵を描くことが多い。その場で撮影して出力す
  る方法は現実的ではない」とのアドバイスを受け、3頁は白紙とした。大原さんからは、撮影
  した画像をUSBに保存し、レポートと一緒に巡回させる(またはipadなどに保存してその場で
  見られるようにする)方法もご教示いただいた(相澤さん)
 ・展示台については、作品とセットで借用するものかがわかるようにしたい。
 ・「展示の注意点」に免震台使用の記載が必要では。
 ・立体の場合レポートに書き込むのは最低限、あとはデジカメで沢山撮るのが実情である。

【その他】
  以下のような質問・意見が寄せられました。
 ・「取扱いの注意点」は事前にチェックすべきことか、現場で確認することか?
   → 両方のケースが考えられる。
 ・巡回先が4会場以上の時は? 
   → カスタマイズしてもらう(※部会後に修正版(5会場)を作成しました)
 ・エクセルはバージョン変更やPC環境、カスタマイズによるセルの移動でフォーマットがすぐ
  崩れてしまう。入力方法まで含めての提案は難しいのでは。
 ・面下梱包/面上梱包の判断基準、額装・梱包の具体例や材料説明、劣化損傷の症例紹介等が
  併せて必要。
 ・コンディションレポートは貸出側/借用側の共通理解を図るのが重要目的であり、チェック時
  の撮影は許可してほしいこと、輸送・展示で危険な点のみをチェックすることなどを研修会で
  は併せて提言したい。
 ・作品返却時にチェック時の撮影データも返却するか?
   → 数年後に問題が発生する場合もあるので、基本的にはしていない。その点も含めて撮影
     許可してもらう必要がある。

>※次回部会に向けて、田中さんに洋画フォーマットの修正、佐野さんに工芸フォーマットの作成、相澤さんに症例作成をお願いしました。

連絡事項等

11:20~11:50
1. 部会交付金について
  今年度は20万の交付金をいただきましたが、一昨年度からの繰越金(※昨年度は交付を受け
 ず)もあり、例年より多めの残額が出ていることから、今後の使途と来年度の交付金申請につ
 いて協議しました。以前、提案のあった冊子(コンディションチェックシートの使用・凡例集)
 作成については、全美HP上での公開で良いのではという意見があったほか、学芸員研修会の準
 備を優先すべき状況でもあることから、現時点では見送りとします。また、来年度の申請につ
 いては、第1回会合開催後に必要に応じて行うことになりました。
2. 次年度の事務幹事について
  来年度も引き続き、相澤・根本の2名で担当します。
3. 次年度の会合について
  福岡市美術館、平塚市美術館を候補としています。福岡市美の渡抜さん、平塚市美の勝山さん
 (今回欠席)と調整のうえ、改めて皆さんにご連絡します。お呼びしたい講師の方がいらっしゃ
 る場合は事務幹事までお知らせください。
4. 写真ワーキンググループについて
  影山さんからML上で呼びかけを行っていただくことになりました。
5. 学芸員研修会について
  再来年度(2017年3月)の学芸員研修会を当部会が担当することがほぼ決定となりました。
6. その他
  根本から、各館で使用している高所作業車のメーカーとメンテナンスについて情報提供をお願
 いしました。
※13日午後にオプショナル・ツアーとして、鹿敷製紙(修復用紙等を製造されている工場)と高知県立紙産業技術センターを見学。鹿敷製紙は10名、紙産業技術センターは6名参加。

出席者

出席者19名、オブザーバー4名
 
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