保存研究部会過去の活動

日時
2022年8月9日(火) ~2022年8月10日(水)
場所
福岡市美術館
レクチャールーム

第56回保存研究部会会合報告

内 容

8月9日(火)
14:00 木本文平部会長(碧南市藤井達吉現代美術館)による挨拶
     中山喜一朗福岡市美術館総館長による挨拶
14:00~17:30 講演及び質疑応答・意見交換
         「美術館における空気環境調査と対策」
          (山崎正彦氏/光明理化学工業株式会社)
 山崎正彦さんより、美術館における空気環境の調査と対策について、同社開発の北川式ガス検知管とエアーサンプリングポンプを使用しての実技を含めて、ご講演いただきました。
 ガス検知管については、開発史からその原理と構造、また、同じく美術館の環境調査に使用されるパッシブインジケーターとの比較や実際の測定法の解説をいただいたほか、化学吸着材やバリテック(アルミ材)といった製品による、展示ケース内の有害ガスの低減方法などについてもお話いただきました。
 一方、実技として、合板やコーキング剤、養生テープなどを使用して、実際に有害ガスの測定をしましたが、人間の手のひらから検知されたアンモニア濃度には、参加者から驚きの声があがりました。また質疑応答では、検知管のメンテナンスなど具体的な話題におよび、参加者の関心の高さがうかがえました。
8月10日(土)
9:30~11:30 バックヤードツアー
 企画幹事・渡抜さんのご案内で、2019年にリニューアルオープンをした同館バックヤードを見学させていただきました。
 古いものでは紀元前の遺物から現代美術まで、多彩な美術作品、約16,000点におよぶ同館のコレクションを保管する6つ(!)の収蔵庫や素晴らしい修復室、またトラックヤード周辺の倉庫や設備など、興味深く拝見しました。幅広いジャンルの作品の保全はもちろん、館内で働く職員のことを考え抜いた工夫がそこかしこに見られ、保存担当の渡抜さんのご苦労がしのばれました。
 また合わせて、同館で今秋開催予定の「鳥獣戯画」展において、国宝を収める展示ケースの空気質の改善の取り組みについても解説いただきました。

11:45~12:15 連絡事項等
・事務幹事の邊牟木さんより、全国美術館会議災害対策委員及び会員有志で、被災時の初動(作品
 の緊急搬出等)に利活用できる「緊急時のための常備用資機材リスト」を作成、今年5月に全美
 HPにアップしたという報告がありました。同リストは、専門家や学芸員のみならず、美術館に
 関わる誰もが使えることを目標としているもので、ぜひご活用いただきたいということです。
・事務局の小林さんより、川崎市市民ミュージアムでのレスキュー活動について、現状報告があり
 ました。コロナ過で中断していたレスキュー活動再開後、現在のところ、1週間で1~2名(平
 均)の参加者という状況ですが、川崎市とは、少しずつでもよいので、末永く活動を継続すると
 いうことで、合意しているとのことです。
・今年度、保存部会の担当となっている、第37回学芸員研修会に関して、テーマや今後のスケジ
 ュールについて話し合いました。事前に部会事務幹事より依頼したアンケートに寄せられた回答
 を吟味した上、テーマは「美術館の防災対策」とし、地震や水害など幅広い災害について取り上
 げることとしました。近年の災害多発から社会的関心が高まっていることや、専門家だけでは
 なく、幅広い美術館職員の方々にも関心を持っていただけるような、間口の広いテーマであるこ
 となどが、決定の理由です。
 なお、皆様にご提案いただいたテーマは、いずれも大変興味深いもので、今後の会合で取り上げ
 ていくということで合意を得ました。
 お忙しい中、アンケートにご協力いただいた皆様に感謝致します。
・次回会合は、学芸員研修会の打ち合わせを兼ね、関東地方での開催を予定したいと思います。
(報告者:岩手県立美術館 盛本直美)

出席者

1日目:部会員9名、オブザーバー3名、事務局1名
2日目:部会員8名、オブザーバー2名、事務局1名

 
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