博物館法制度の今後の在り方について(答申)

 現在、博物館法の改正が検討されていることは皆さまもご承知かと存じます。1951年に博物館法が制定されてから70年が経過し、その後小さな改定はなされたものの、博物館の総数は当初の約200館から2018年時点で約5,700館に増加している現状に則さない面が多々出てきています。もちろん博物館、美術館の活動内容も大きく変化を見せています。現行の博物館法と現状の乖離に鑑み、文化庁は、文化審議会博物館部会を設け、法改正の協議を続けています。
 全国美術館会議(以下、全美)にとっても、博物館法改正が他人事でないのは言うまでもありません。博物館部会には、正会員の国立新美術館館長逢坂恵理子氏、九州国立博物館館長島谷弘幸氏、出光美術館館長出光佐千子氏が参加され、博物館部会のワーキンググループには、ちひろ美術館東京の主席学芸員竹迫祐子氏が加わっております。しかし、いずれの方も全美からお願いした経緯はなく、特にワーキングでは公立館などの現場の状況を知る人物が参加していないので、全美から文化庁にワーキングのオブザーバーの参加を求めました。この件は既にお知らせしてありますが、副会長の徳川美術館館長徳川義崇氏、東京ステーションギャラリー館長冨田章氏、奈良県立美術館学芸課長安田篤生氏、町田市立国際版画美術館学芸課長滝沢恭司氏、横須賀美術館学芸員中村貴絵氏にその任をお願いしております。
 今年度の博物館部会は、文科大臣から「これからの時代にふさわしい博物館制度の在り方について」諮問が出され、それに答えるべく、10数度の協議を続けてきました。今年度は博物館登録制度の在り方を中心に論議が重ねられ、12月に「博物館制度の今後の在り方について」と題した答申案が出されました。この答申内容について12月23日(木)18:30より、文化庁から全美の上記メンバー、会長、事務局に対してリモートによる説明会が開かれました。説明の概略は、文化庁作成の「博物館法制度の今後の在り方について(答申)」にあるとおりです。
 今回の答申案では、博物館の登録制度が中心で、改正の一番の眼目は、登録制の拡大にあります。現行では、外形的基準(設置主体、施設面積、開館日数、学芸員の有無等)で登録の可否が判断されていましたが、新たな登録制では、設置主体の拡大が目指され、また外形基準とともに活動内容が重視されるようです。ただ、今回は登録制度にかかわる事項の検討が主なもので、学芸員制度や博物館振興の制度整備等については、今後継続して協議がなされていきます。文化庁からは、新たな博物館法の令和5年度施行を目指して具体的内容の整備を進めるとの説明がありました。今回の法整備が美術館博物館にとって有益なものとなるよう、また、実効性を確保するためにも美術館博物館の社会的役割の重要性を設置主体に十分に伝わるようしていただきたいと文化庁に要請し、文化庁からは全美の今後の協力が要望されました。
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