会長あいさつ

 全国美術館会議が発足して、今年で61年になります。当初は館長たちが年に一度集う親睦会的な性格のものであったと聞いていますが、加入館数の増大と活動の幅の拡大、経済的、社会的な状況の変化などに伴って、館を取り巻く現実的な課題を話し合い、共同して解決をはかるというより実践的な組織へと徐々に移行してきました。一昨年に制定された美術作品の国家補償制度の実現への働きかけや東北大震災で被災した館蔵資料のレスキュー活動、チャリティー・オークションへの取り組みは、今日の全国美術館会議に求められている新たな役割を象徴するものであったといえるでしょう。
 こうした課題にリーダーシップを発揮してこられた青柳正規前会長は本誌の創刊号に「(全美は)我が国も美術館はどうあるべきかという将来構想を練り、その構想を広く社会に訴えると同時に実現への努力をすることが重要である。全美は『提案と主張』の組織に変わりつつあるのである」と記しておられます。周知のように、バブル経済崩壊後の美術館は厳しい財政難を余儀なくされておりますが、ただ座して経済の好転を待つのではなく、冬の時代を乗り換えるための社会や行政への主体的な働きかけが必要であるに違いありません。三百六十余館からなる全美には、まさに組織の力を生かして美術館の側からの「提案と主張」を積極的に推し進めていくことが期待されているのです。
 そのためには各企画部会を中心とした活動を維持、発展させなければなりませんが、また制度的なテーマについての問題提起も重要であろうと思われます。たとえば指定管理者制度は制定以来10年になろうとしており、導入した館の実績についての調査や検証が総合的になされなければなりませんし、公立美術館の独立行政法人化も喫緊の課題であるでしょう。そうした懸案に積極的に対応するためには、全美そのものの法人化も早晩、日程に上がってくるはずです。
 もちろん会員館相互の人的な親睦を深めるという設立時の目的が、今後とも本会議のもっとも重要な意義であることに変わりはありません。青柳前会長の行動力には及ぶべくもありませんが、皆様と手を携えて会の発展に微力を尽くすつもりでおります。よろしくお願い申し上げます。

全国美術館会議会長 建畠 晢(埼玉県立近代美術館長)
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