研究部会

研究部会とは

 全国美術館会議は、1993年にワーキンググループを発足させました。会員美術館の学芸部門職員の中で、同じ業務を担当するもの同士、同じ分野に関心を払うもの同士が集まり、問題意識を共有しながら、共同研究、情報交換、研修会の企画実施等を行う組織です。
 これまで、日本の美術館学芸員は、他館職員とは巡回展覧会の協働や学会活動を通じてしか交流がほとんどありませんでした。
 ほとんどの日本の美術館が加盟する全国美術館会議の内部組織というメリットを生かすことによって、学芸員間レベルの活動が広く、また深く実行しやすくなります。
 まず、「保存」「情報処理」「教育普及」の3グループが立ち上がり、共同プロジェクトの成果を刊行物や、研修会開催などにより、全国美術館会議全体にフィードバックし始めました。その後、「小規模館」などのグループなどが次々に自発的に発足し、実績を重ねています。
 ワーキンググループ発足から10年を経過した2003年、全国美術館会議は、これらの活動をより明確に位置づけるためと、またいくつかの緊急な今日的課題にも取り組むために、ワーキンググループを発展的解消させ、企画委員会のもとで6つの研究部会として生まれ変えさせました。
 それぞれは、十数名から大きいところでは100名を超えるメンバーによって構成され、所属する美術館での日常業務の合間をぬって、積極的な活動が展開されています。
 全国美術館会議が、日本の美術館が集まる唯一、最大の連合組織であるために果たすべき社会への責任は、現在、こうした研究部会の日々の活動に基盤をおいていると考えています。

保存研究部会

 保存研究部会では、各部会員の所属館における保存の工夫や問題点などの情報共有を行いつつ、その成果をいくつかの刊行物としました。
 また会員館有志職員とともに、阪神淡路大震災や東日本大震災に際しては被災状況調査とその報告書作成も行いました。近年はコンディション・チェックシート案の作成や、写真及び現代美術作品の保存をテーマに加えて会員一同取り組んでおります。

教育普及研究部会

 教育普及研究部会は、会員及び外部の教育普及に関心のある専門家らとの情報交換やディスカッション、ワークショップなどを通して視野を広げ、美術や美術館、教育普及活動について考えを深め基本理念を共有するとともに、各自が普段の業務を振り返り、点検するきっかけを作ることを目的としています。

情報・資料研究部会

 情報・資料研究部会は、ホームページや所蔵品データベース等の美術館活動を支える情報技術と、所蔵品目録や展覧会カタログ等の美術館が取り扱う資料とをめぐり、積極的な活動に取り組む研究部会です。図書や作品情報の扱いにおける従来からの普遍的課題とそれを支える情報技術という現代的課題との両面にバランスよく配慮するように努めながら、情報共有型の部会活動を目指しています。

小規模館研究部会

 自らが<小規模>と自認する美術館・博物館が館単位で加盟する研究部会です。よりよい館を作っていくため、知恵と技術を共有するネットワーク作りを目指しています。取り組む研究テーマは、展覧会企画・作品調査・展示方法・作品保存・教育普及・危機管理など、美術館運営にかかわるあらゆる問題におよびます。現在、北海道から鹿児島までの50館余りが加盟しています。

美術館運営研究部会

 本部会は指定管理者制度研究部会と美術品国家補償制度研究部会を発展的に解消し、2008年2月に発足したものです。恒常的に特定のテーマに取り組むというよりも、その時点で重要と思われる課題と臨機に取り組んでいます。これまでの主な活動成果に、全国美術館会議版「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」(2017)の作成や「現場で使える美術著作権ガイド」(初版2011、改訂新版2019、著=甲野正道)の編集があります。

地域美術研究部会

 美術館が存立する地域における美術の歴史を調査・研究して、歴史的に重要な作品を収集・保存、展示・公開することは、その地域の美術の伝統を継承して、新しい美術の創造に寄与するために重要な活動です。
 地域美術研究部会では、全国各地の「地域美術」に関する情報交換を進めるとともに、新たな「地域美術」の調査・研究を促して、全国の美術館(学芸員)の相互協力を図って、将来的には「地域美術」の観点から新しい美術史を総合的に研究することを基本方針及び目標として活動しています。
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